三里塚耕作権裁判―NAAと結託する裁判長を弾劾
8月22日、千葉地裁民事第2部(本田晃裁判長)で、市東孝雄さんの耕作権裁判が開かれた。三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民70人は、農地を守り抜く決意も新たに、結束して全力で闘い抜いた。
開廷に先立ち、千葉市中央公園に集合して太郎良陽一さんの司会で決起集会を開いた。
最初に、東峰の萩原富夫さんが発言に立った。「この裁判は16年も続いているが、成田空港会社(NAA)が証拠として出してきた同意書、境界確認所は偽造されたもの。これらの作成過程を明らかにすることも拒否し、裁判所が反動判決を出すのを期待している。私たちのような弱い立場の農民、労働者の権利が踏みにじられるのを許すことはできない。市東さんの農地を守ろう」と訴えた。
さらに「成田空港機能強化として、B滑走路の再度の北への1000メートル延長工事が始まろうとしている。これに対決する9・4現地闘争に集まってほしい。名古屋の中部空港、福岡空港でも拡張が進められているが、東北、北海道では豪雨被害が続き、明らかに地球温暖化の影響で大きな災害が起きている。CO2、温暖化ガスを減らすべき時に、政府は逆に飛行機を2倍飛ばすことで、地球環境を破壊しようとしている。気候変動を促進する空港拡張をやめろと訴える新たな署名運動を開始したので、ぜひ署名を集めてほしい」と呼びかけた。
続いて動労千葉副委員長の中村仁さんが、「成田廃港に向けた闘いを反戦闘争として貫く」として、9・2新やぐら控訴審判決、9・4現地闘争、10・9全国集会と連続する三里塚決戦をともに担う決意を表した。さらに、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受け、太郎良さんのリードで意気高くシュプレヒコールを上げ市内デモに出発した。
先頭を進む反対同盟宣伝カーは農地を守る訴えに加え、「安倍国葬を許さない」の声を繁華街に強く響かせ沿道の注目を集めた。
コロナによる傍聴人数規制が解かれた法廷を満杯にして開廷した。
弁護団は準備書面を陳述し、NAAの主張の矛盾を激しく追及した。
NAAは市東さんを「不法耕作者」と決めつけ「農業をやめて出ていけ」と迫っているわけだが、市東さんの耕作する南台の賃借地の位置特定がそもそも間違っている。関係土地図のE1(南台41―9)はもともと石橋家の賃借地であり、市東家は一度も耕したことはない。ところがNAAはE1を「市東家の賃借地」と言い張り、そこからすべての立論を行って論理が破綻している。最近では、市東東市さん(孝雄さんの父)について「石橋家との間で、地主に無断で2回の土地交換を行った」などという憶測を述べ立てた。
また、NAAが自らの主張の証拠として提出したのは、1988年に旧地主藤﨑と東市さんとの間に交わされたとする「同意書」「境界確認書」とそれに付けられた図面なのだが、これは偽造文書だ。東市さんは85年に脳梗塞を患っており、文書に書かれた筆勢が力強い「市東東市」署名は、とても本人が書けるものではない。
これらの文書がつくられた経緯について明らかにするため、関連する記録、報告書など、空港公団時代からNAAが持つ文書類一切を提出するよう弁護団は一貫して求めてきたが、NAAは「存在しない」と白を切ってきた。
さらにNAAが今年6月、7月に出した書面で言うには、「南台農地の買収については直接担当者は上西亮治(用地課長代理)、その上司の用地課長、その上司の用地部長の必要最小限の3人のラインで扱っていた。3人ともすでに亡くなった。上西の仕事のやり方は、文書の入手時に逐一交渉記録化せず、入手した文書自体をファイル中に編綴(へんてつ)していくというもので、だから交渉記録等は存在しない」と。つまり、「死んだ上西が独特のやり方で担当してたので、記録は残っていません」と言うのだ。
あまりにも見えすいた大ウソだ。
空港公団は、つねにあらゆる用地交渉の過程を詳細な報告書にしてきた(相手との雑談も含めて)。記録を残さない方式など認められる余地はなかった。
部長、課長以外には担当者が一人だけ、というのもありえない。空港公団―NAAは買収相手の土地所有者と接触する場合、通常2~3人での対応が定められていた。上西とは別の買収担当の課長代理が存在していたことは明白だ。
それは誰か。
88~89年の職員名簿を調べると、空港公団用地課には用地課長の笠原啓明のもと、課長代理および調査役、つまり用地買収の実働メンバーとして、進藤修一、浅井昭、浅海照行、法理哲二、保坂活人、山田正博、白鳥晃、髙橋通夫、鈴木勲、糸賀豊、山本進、佐藤直人、大貫喜久男、篠塚政広、石井勝守、片岡佳一、中村正などの名前が並んでいる。この中に南台の買収交渉に直接かかわり、文書作成を担当した者が必ずいるはずだ。NAAはまず、これらの人々の安否・所在を調査確認し、生存者の陳述書を提出せよ!―
この至極当然の要求に対しNAAの代理人4人はかたくなに沈黙を守るだけだ。
弁護団は本田裁判長に対し、直ちに旧職員の安否・所在調査の実行について強く促すよう求めると、裁判長は聞き取りにくい小声で弁明を始めた。「現時点において裁判所としては、東京高裁を経て文書提出命令がすでに確定しており、原告(NAA)が関連文書を提出すべきというスタンスは変わっていない。だが直接に命令し出させることはできない」
このごまかしに満ちた姿勢に、傍聴者の怒りが噴出した。「なぜやらない!」「今すぐ調べさせろ!」「NAAの手先か!」
弁護団も怒りをあらわにして、裁判長を追及した。「担当者が死んだからわからない、記録もないとはでたらめだ。そうした調査一つできないというなら、会社ではなく烏合の衆だ。裁判所もNAAに愚弄されているのですよ」
騒然とする法廷で、それでも裁判長は、「原告の認否反論をまず見たい。提出しないと自らの主張の不利益となることは原告も承知しているはず」などとNAAをかばい立てする。
「何のための裁判長だ!」と怒りの声はますます高まり、廷内は騒然となった。そんな中で裁判長は諭すように「認否反論があれば、10月までに出すように」と告げると、NAA代理人は「ハイ」と素直にうなずく。どう見ても茶番だ。
閉廷が告げられても、傍聴者の怒りは収まらず、青ざめて法廷を後にするNAA代理人を最後まで徹底弾劾し続けた。次回期日は11月28日。
千葉県弁護士会館で、伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。最初に市東さんがあいさつに立った。「ああいう裁判官が偉くなっていくというのが国策裁判。本当に許せません。きょうのように裁判所、NAAを追い詰める声を一層強くぶつけてほしい」
続いて葉山岳夫弁護士をはじめ弁護団が法廷を振り返り、「上西ら3人が死んで何もわからない、文書もない」と言い張るNAAの恥知らずなうそを糾弾し、そのNAAと結託して真相究明を妨げる裁判長を徹底的に批判した。今後もこれを焦点として、裁判所との力勝負になることを全体で確認し合った。
最後に伊藤さんが、9・2新やぐら控訴審判決、9・4現地闘争への参加を呼びかけた。(TN)
スケジュール
◎新やぐら裁判控訴審判決 9月2日(金)午前11時開廷 東京高裁
(10時30分までに裁判所前集合、傍聴抽選)
◎B滑走路北延伸阻止!9・4三里塚現地闘争
9月4日(日)午後1時 天神峰の市東さん宅中庭集合、成田B滑走路延伸予定地デモへ
◎10・9全国総決起集会 10月9日(日) 成田市赤坂公園
主催/三里塚芝山連合空港反対同盟
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